病院から訪問看護へ転職して、後悔したことがあります。
ただし、訪問看護という仕事を選んだことや、病院を辞めたことを後悔しているわけではありません。
自分が一番後悔したのは、転職先となる事業所を十分に見極めなかったことです。
訪問看護ステーションは、事業所によって働き方や人間関係、看護に対する考え方が大きく異なります。
これまで複数の事業所で働いてきましたが、「ここで働けてよかった」と思えたのは1か所でした。反対に、自分には合わなかったと感じた事業所は4か所あります。
この記事では、病院から訪問看護へ転職して感じたギャップや、事業所選びで後悔したこと、今なら転職前の自分に伝えたいことをまとめます。
自分と同じようなつらい思いをする人を、少しでも減らせたらと思っています。
訪問看護への転職で一番後悔したのは「事業所選び」
訪問看護の仕事内容は、どの事業所でも大きくは変わりません。
利用者さんの自宅を訪問し、健康状態の観察や医療処置、服薬管理、家族への支援などを行います。
しかし、実際の働きやすさは事業所によってまったく違いました。
管理者が現場を理解している事業所もあれば、現場の負担を十分に把握していない事業所もあります。
困ったときに相談できる職場もあれば、問題が起きたときに責任を押しつけ合う職場もありました。
求人票には、給与や勤務時間、休日数などは書かれています。しかし、スタッフ同士の関係や仕事の偏り、管理者の考え方までは分かりません。
自分は、この表から見えない部分を十分に確認しないまま転職先を決めてしまいました。
転職には、求人探しや面接、退職手続き、新しい仕事を覚えることなど、大きなエネルギーが必要です。
だからこそ、合わない事業所へ転職したときには、「大切な転職の一枠を、もっと慎重に使えばよかった」と感じました。
それでも、すべてが無駄だったわけではありません。
合わない事業所を経験したからこそ、自分が職場に何を求めているのか、次の面接で何を確認するべきなのかが分かるようになりました。
病院から訪問看護へ転職して感じたギャップ
自由度が高い反面、自分で判断する場面が多い
訪問看護へ転職して最初に感じたのは、自由度の高さでした。
病院では、すぐ近くに医師やほかの看護師がいます。判断に迷ったときも、その場で相談しやすい環境です。
一方、訪問看護では、基本的に一人で利用者さんの自宅を訪問します。
利用者さんの状態に変化があれば、その場で状況を整理し、必要な対応を考えなければなりません。
もちろん、管理者やほかのスタッフへ電話で相談することはできます。それでも、利用者さんを目の前にして最初に判断するのは自分です。
転職した直後は、「この判断で本当に合っているのだろうか」と不安になることもありました。
自分で看護を組み立てられる自由さがある一方で、その判断に責任を持つ必要があります。
利用者さんの生活がよく見える
訪問看護では、病院よりも利用者さんの生活に近い場所で関わります。
病院で食事や服薬、運動について説明されていても、自宅ではほとんど実践できていない方もいました。
しかし、実際の生活を見ると、実践できない理由が見えてきます。
経済的な事情や家族関係、住環境、本人の価値観など、病院では分かりにくかった背景があります。
病院で学んだ方法が、すべてそのまま自宅でも通用するとは限りません。
訪問看護では、正しい方法を一方的に伝えるのではなく、その人の生活の中で続けられる方法を一緒に考える必要があります。
この違いは、訪問看護の難しさであり、面白さでもありました。
転職前にもっと知っておきたかったこと
自家用車を訪問に使うのか
事業所によっては、社用車ではなく自家用車を使って訪問します。
自家用車を使う場合は、次の点を確認しておいた方がよいと思います。
- ガソリン代や車両手当は支給されるのか
- 駐車場代は誰が負担するのか
- 訪問中の事故はどの保険で対応するのか
- 車に傷がついた場合はどうなるのか
求人票に「車通勤可」と書かれていても、訪問にも自家用車を使うとは限りません。
入職してから気づくのではなく、面接の段階で確認しておきたい項目です。
できるからといって、何でも引き受けない
以前の自分は、頼まれた仕事に対して「自分にできるならやろう」と考えることが多くありました。
しかし、職場によっては、その善意が当然のものとして扱われます。
一度引き受けると、「この人ならやってくれる」と思われ、次々と仕事が集まることがあります。
仕事が増えても、給与や評価が同じように増えるとは限りません。頑張る人ほど負担が増え、断る人ほど仕事が少ない職場もありました。
転職前の自分には、次のように伝えたいです。
できるからといって、何でも仕事を引き受けてはいけない。
能力を隠す必要はありません。
ただし、誰に対して、どこまで力を使うのかは、自分で決める必要があります。
頼られることと、大切にされていることは同じではありません。
社交性よりも、適切な距離感が大切
以前は、職場でうまくやっていくには、周囲に合わせたり、頼まれた仕事を断らずに引き受けたりすることが必要だと思っていました。
しかし、実際には愛想よく振る舞うことよりも、適切な距離感を保つことの方が大切でした。
無理な依頼には理由を伝えて断る。
勤務時間外まで当然のように仕事を持ち込まない。
誰か一人の善意に頼らず、仕事を分担する。
自分を守りながら働く力は、看護技術と同じくらい、長く働くために必要だと思います。
合わない事業所に共通していたこと
看護への熱量に大きな差がある
訪問看護ステーションであれば、どこでも利用者さんの生活や看護を大切にしていると思っていました。
しかし、実際には看護に対する考え方も事業所によって違います。
利用者さんの変化を詳しく観察し、今後起こり得る問題まで考える事業所もあります。
一方で、決められた訪問をこなし、記録が終わればよいという雰囲気の事業所もありました。
自分が良かれと思って動いても、周囲に同じ熱量がなければ、「そこまでしなくてもよい」「余計な仕事を増やす人」と受け取られることがあります。
熱意があれば、どの職場でも評価されるわけではありません。
自分の考えを押し殺して働くよりも、自分と近い価値観を持つ事業所を選ぶことが大切だと感じました。
頑張る人ほど仕事が増える
合わないと感じた事業所では、頑張る人ほど仕事が増える傾向がありました。
難しい利用者さんへ対応できれば、難しいケースばかり任される。
資料を作れば、その後も同じ人が担当する。
パソコンが得意であれば、看護とは直接関係のない仕事まで依頼される。
得意な人へ仕事を任せること自体は悪くありません。
ただし、仕事を増やすのであれば、ほかの業務を減らしたり、給与や手当に反映したりする必要があります。
何の調整もなく、「あなたならできるから」と負担を増やすことは、適切な役割分担ではありません。
情報共有がなく、問題が起きると人のせいにする
訪問看護では、一人の利用者さんに複数のスタッフが関わります。
そのため、前回の訪問で起きたことや、主治医・家族からの連絡を共有することが欠かせません。
必要な情報が共有されていないにもかかわらず、問題が起きると訪問したスタッフの責任にされる職場もありました。
本来考えるべきなのは、誰が悪いかではありません。
なぜ情報が共有されなかったのか、次から同じことを起こさないために何を変えるのかを考える必要があります。
人を責めることが優先される職場では、スタッフが失敗を隠したり、自分の担当以外に関わらなくなったりします。
結果として、さらに連携が悪くなります。
「スタッフ第一」という言葉だけでは判断できない
求人票やホームページには、「スタッフを大切にします」「働きやすい職場です」といった言葉が書かれています。
しかし、本当に職員を大切にしているかどうかは、言葉ではなく行動に表れます。
職員の意見を聞いているか。
業務量に偏りがないか。
休みを取りやすいか。
トラブルが起きたときに、管理者が職員を守る姿勢を見せるか。
訪問件数や利益ばかりを優先し、職員の負担を無視していないか。
理念に良い言葉を書くことは簡単です。
面接や見学では、実際にその理念に沿った運営が行われているかを見る必要があります。
病院を辞めたことは後悔していない
ここまで、訪問看護へ転職して後悔したことを書いてきました。
それでも、病院を辞めたこと自体は後悔していません。
病院で学んだ知識や経験は、今でも大切な財産です。ただ、自分にとって病院の閉鎖的な環境は窮屈でした。
決められた枠の中へ人を当てはめ、個性が生かされにくい環境では、自分らしい看護を続けることが難しいと感じていました。
訪問看護では、利用者さんの生活を見ながら、「この人にとって必要な看護は何だろう」と考えられます。
今の事業所では、病院にあった委員会活動や頻繁な勉強会もなく、以前より看護に集中できるようになりました。
訪問看護だから必ず働きやすいのではありません。
それでも、自分に合う事業所を選べば、病院よりも自分らしく働ける可能性があります。
良い事業所には共通点があった
自分が働きやすいと感じた事業所には、次のような特徴がありました。
- 管理者が現場を理解している
- 困ったときに相談しやすい
- 無理な訪問を押しつけない
- 仕事とプライベートを分けている
- 飲み会や過度ななれ合いを強要しない
特別な制度があることよりも、当たり前のことを当たり前に行っている職場の方が、安心して長く働けると感じています。
失敗したときに支えてくれたのは、普段の関わりだった
訪問看護を始めた頃、道を間違えて、別の方の家へ行ってしまったことがあります。
本来の利用者さん宅への到着が遅れ、急いで向かって事情を説明し、謝罪しました。
怒られても仕方がないと思っていましたが、その利用者さんは、自分とのこれまでのやり取りを覚えてくださっていました。
普段の対応を理解してくださっていたからこそ、事情を受け止めてもらえたのだと思います。
もちろん、遅れてよいという話ではありません。
ただ、この経験から、失敗したときほど普段の関わり方が表れるのだと学びました。
新人時代、自分自身が粗末に扱われたと感じた経験があります。
そのときに、「自分は誰に対しても、同じような対応はしない」と決めました。
どれだけ合わない人や理解できない人でも、反面教師として学べることはあります。
嫌な経験まで肯定する必要はありません。
それでも、自分の立ち振る舞いや相手との距離感を見直し、次の選択へ生かすことはできます。
理不尽なことを、すべて自分の責任にする必要はありません。
変えられない相手や職場ではなく、自分に変えられる部分へ目を向けることが、今の良い事業所へたどり着くことにつながりました。
訪問看護へ転職する前に確認したい3つのこと
1.給与形態の実際
基本給だけで判断せず、固定残業代やオンコール手当、緊急出動手当、賞与の実績まで確認した方がよいと思います。
「月給が高い」と感じても、固定残業代が含まれていたり、オンコールを多く担当することが前提になっていたりする場合があります。
求人票だけで分からないことは、面接で具体的に質問してください。

2.事業所の雰囲気と体制
管理者の話し方や、スタッフ同士の会話、事務所内の雰囲気を見てください。
困ったときに誰へ相談するのか、情報共有をどのように行っているのか、急な訪問をどのように分担するのかも大切です。
可能であれば、入職を決める前に事業所を見学することをおすすめします。

3.通勤のしやすさ
通勤は毎日のことです。
給与や仕事内容が良くても、通勤だけで疲れてしまえば長く続けることは難しくなります。
訪問看護では、勤務中にも車を運転することがあります。
自宅から事業所までの距離だけでなく、直行直帰ができるのか、訪問エリアがどこまで広いのかも確認しておくと安心です。
まとめ
訪問看護へ転職して、後悔したことはあります。
しかし、訪問看護という働き方や、病院を辞めたことは後悔していません。
一番の後悔は、もっと慎重に事業所を選ばなかったことです。
合わない事業所で働いた経験はつらいものでしたが、その経験があったからこそ、自分に合う職場の条件が分かるようになりました。
訪問看護は、事業所によって働きやすさも、看護のやりがいも大きく変わります。
転職を急いで決める必要はありません。
給与だけでなく、管理者の考え方や職場の雰囲気、情報共有の方法、通勤のしやすさまで確認してください。
そして、できるからといって、すべての仕事を引き受ける必要はありません。
自分の役割と生活を守りながら働くことも、長く看護を続けるために必要です。
病院を辞めたことは、後悔していません。
今は、自分に合う事業所を選ぶことができれば、訪問看護は自分らしく働ける仕事だと思っています。
この記事が、訪問看護への転職でつらい思いをする人を、一人でも減らすきっかけになればうれしいです。



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