訪問看護では、基本的に一人で利用者さんのお宅へ行きます。
なので病棟から転職すると、
一人で訪問して、何かあったら全部自分で判断するの?
と不安になる人もいると思います。
実際にはそんなことはありません。
訪問中は一人でも、その利用者さんには医師やケアマネジャー、ヘルパー、薬剤師など、いろいろな人が関わっています。
自分が普段特に連絡することが多いのは、ケアマネジャーと医師です。
体調がいつもと違う。
薬について相談したい。
軟膏などの処方について医師へ確認したい。
訪問日時が変わった。
今までのサービスでは生活が難しくなってきた。
こういうことがあれば、必要な人へ連絡します。
ただ、自分は、
多職種連携が大切だから、みんなで情報共有しましょう。
と考えて仕事をしている感覚はあまりありません。
それだとちょっと教科書っぽいんですよね。
このままだと利用者さんが何に困るだろう。じゃあ、誰に伝えたらいいだろう。
そう考えていくと、結果的に医師やケアマネジャー、ヘルパーさんなどへつながっていきます。
自分にとっての多職種連携は、そんな感じです。
訪問看護では医師とケアマネジャーへの連絡が多い
自分の場合、普段の訪問で特に連絡することが多いのは、医師とケアマネジャーです。
ただ、同じ情報を二人へそのまま送るわけではありません。
それぞれ役割が違うので、必要な情報も変わります。
ケアマネジャーには「生活が変わるかもしれない情報」を伝える
自分は看護師だけでなく、以前ケアマネジャーとして働いていたことがあります。
その経験から考えると、ケアマネジャーへ、
今日も血圧正常でした。
ご飯食べてました。
という変化のない情報を毎回送っても、そこまで必要ではないと思っています。
もちろん定期的な報告書などでは必要な情報ですが、毎回電話するような内容ではありません。
逆に欲しいのは、その利用者さんの生活やサービスが今後変わる可能性がある情報です。
例えば、
血圧が高い状態が続いて医師へ報告し、降圧薬が開始になりました。
とか、
低血糖があり対応後は改善しています。最近は食事量も落ちているようです。
とか。
不穏な言動が続いていて、ご家族の対応が難しくなっているという情報もそうです。
そういう話が来ればケアマネジャー側も、
このまま今のサービスで大丈夫かな。
デイサービスの利用は続けられるかな。
家族への支援を増やした方がいいかな。
と考え始めることができます。
看護師としては「体調の変化」でも、ケアマネジャーから見ると生活やケアプランを見直すきっかけになる情報なんですよね。
なので自分は、その先で生活が変わりそうな情報は早めに伝えるようにしています。
「実は前からこうだったんです」は早めに教えてほしい
ケアマネジャーをしていたとき、
実は少し前からこういう状態で……。
と後から聞くこともありました。
こちらとしては、
いや、早よ言えや、実はちゃうわ。
って話なんですよね(-“-)
もっと早く分かっていれば、先にサービスを考えたり、ご家族へ連絡したりできたかもしれません。
だから今は訪問看護師として、
これは今後の生活に影響しそうだな。
と思ったら、ケアマネジャーへ共有するようにしています。
大きく崩れてから初めて伝えるより、少し怪しくなってきた段階で情報がある方が、動ける選択肢も増えます。
医師への報告は「何が起きて、どう見ているか」を整理して伝える
医師へ連絡するときも、何でも思いついた順番に話すわけではありません。
自分はSBARのように、
今何が起きているのか、背景は何か、自分はどう見ているのか、何を相談したいのか
をある程度整理して伝えるようにしています。
例えば初回訪問で事前情報と実際の状態が違ったとき。
普段と明らかに様子が違うとき。
疼痛や呼吸状態などに変化があるとき。
内服について確認したいとき。
創傷や皮膚トラブルがあり、処置について相談したいとき。
そういう場面で連絡します。
もちろん、
これはすぐ報告した方がよさそう。
と思う内容もあれば、
次回の報告でも大丈夫そう。
というものもあります。
全部を一人で判断する必要もありません。
迷えば管理者や他のスタッフへ相談しますし、自分で判断できそうならそのまま医師へ連絡することもあります。
訪問は一人ですが、判断まで全部一人で抱える必要はないと思っています。
往診医と病院の主治医では連絡の流れが少し違う
自分が関わってきた在宅の利用者さんでは、往診医が入っている方が多いです。
往診医の場合は電話やICTなどで比較的直接やり取りできることがあります。
一方、病院へ通院している利用者さんなら、外来へ電話したり、相談員さんを介して連絡を取ってもらったりすることもあり、少し時間がかかることがあります。
ただ、自分の経験では、往診医が入っていない利用者さんは比較的状態が安定していることも多かったです。
これは自分がこれまで担当した利用者さんの印象なので、事業所や地域によって違うと思います。
ヘルパーさんからもらう情報もかなり大切
多職種連携というと、
医師と看護師。
みたいな医療職同士の話を想像するかもしれません。
でも、ヘルパーさんからもらう情報もかなり大切です。
看護師とは訪問する時間も違いますし、見ているところも違います。
最近あまり食べていません。
前よりトイレが間に合わなくなっています。
昨日までは普通に歩いていましたよ。
冷蔵庫の中、ほとんど何もなかったです。
こういう生活の情報は、実際にその時間に家へ入っている人だからこそ分かります。
自分は、
ヘルパーだから。
看護師だから。
と、職種で情報の価値を分ける必要はないと思っています。
そもそも畑が違います。
できることも、見えることも違って当たり前です。
だからこそ、それぞれが見た情報を合わせる意味があります。
逆に訪問看護からも、皮膚トラブルが出てきたので日常のケアでここを見てほしい、ケア方法が変わったので共有したい、ということがあればヘルパーさんへ伝えます。
情報は、鮮度が命です。
何週間も経ってから、
そういえば最近こんな感じです。
では、遅いこともあります。
薬のことは薬剤師さんへ頼った方がうまくいくこともある
薬の管理でも、訪問看護師が全部やる必要はありません。
薬が複雑で飲み忘れがある。
一包化した方が分かりやすそう。
薬のカレンダーを使った方がよさそう。
そういうときは薬剤師さんへ相談することがあります。
自分たち看護師から説明するより、薬剤師さんから説明してもらった方が本人に入りやすいこともあります。
一包化についても大変お世話になっています。
例えば、利用者さんが、
最近、薬をよく忘れるんです。
と言っていたとします。
その場で薬を並べて、
忘れないようにしてくださいね。
と伝えるだけなら簡単です。
でも、訪問看護師は翌朝も必ずいるわけではありません。
だったら、
明日はどうする?
と考えます。
薬の飲み方そのものが複雑なら、医師や薬剤師さんへ相談する。
薬剤師さんから服薬カレンダーを提案してもらう。
一人で管理すること自体が難しくなっているなら、ケアマネジャーへ伝えてサービスも含めて考える。
毎朝ヘルパーさんが入っているのであれば、必要な範囲で状況を共有する。
こうして考えると、
「多職種連携しよう」と思って連携しているというより、「この人が明日困らないためにはどうしたらいい?」と考えた結果、必要な人へつながっていく。
自分は、これが多職種連携なんじゃないかなと思っています。
情報共有は多ければ多いほどいいわけでもない
連携が大切だからといって、利用者さんとの会話を何でもかんでも全職種へ送ればいいわけでもありません。
そんなことをしていたら、読む方も大変です。
自分が特に共有するのは、
- 利用者さんの生活に大きな変化があった
- 体調が変わり、医療的な対応が変わった
- ケア内容が変更になった
- 今までと違う関わりが必要になった
- 家族の介護状況が変わった
- 他の職種にも対応してもらう必要が出てきた
といった内容です。
例えば、今まで一人で歩いていた利用者さんが転倒を繰り返すようになった。
訪問看護だけが、
また転倒してました。
と記録して終わっても、生活は何も変わりません。
必要なら医師へ身体的な原因について相談する。
ケアマネジャーには生活状況の変化として伝える。
福祉用具やサービスの見直しが必要なら、そこから調整が始まります。
また、スタッフごとに関わり方を変える必要が出たときは、事業所内でも共有します。
昨日の看護師にはこう言われた。
今日は全然違うことを言われた。
明日はまた別の対応をされた。
それが続けば利用者さんだって、
この事業所、ちゃんと共有してるの?
と思いますよね。
全部同じ人間になる必要はありませんが、ケアの方向性はある程度そろえておく必要があります。
多職種で意見が違うのは珍しいことではない
在宅では、関わっている人全員が最初から同じ方向を向いているとは限りません。
例えば、自分ではほとんど身の回りのことができないけれど、
どうしても家に帰りたい。
という本人がいる。
ご家族は、
家では自分たちだけでは見られない。施設に入ってほしい。
と考えている。
ケアマネジャーは、本人の希望をかなえるなら、
ヘルパーやデイ、訪問看護などのサービスを入れて、できるところまで支えられないか。
と考えるかもしれません。
医師は医療面から、
在宅生活はできそうだけれど、状態が悪くなれば入院も考えましょう。
と話している。
そして訪問看護が実際に家へ入ったら、
思っていたより動けないな。
夜間の排泄を家族だけで支えるのはかなり大変そうだな。
と分かることもあります。
この場合、
誰が正しい?
という話ではないと思っています。
本人には本人の生活があります。
家族には家族の生活があります。
ケアマネジャーはサービスを組む立場から考えています。
医師は医療的な安全性を見ています。
訪問看護は実際の家での様子を見ています。
それぞれ見えている景色が違います。
だから、
今のサービスで本当に生活を続けられるのか。
ご家族はどこまでなら対応できるのか。
何か起きたときはどうするのか。
と情報を出し合って、現実的なところを探していきます。
何が正解なのか分からないケースもあります。
人の生活ですからね。
そんな簡単に一つの正解が出るものでもないと思っています。
実際の連携で早く治療につながったこともある
以前、普段はかなり元気な利用者さんが頭痛を訴えていたことがありました。
いつもの様子と少し違う。
さらに神経症状も見られたため、そのまま様子を見るのではなく救急搬送につなげました。
搬送先で脳血管疾患が分かり、早い段階で治療を受けることができました。
その後は大きな後遺症もなく自宅へ戻ってこられました。
本人はかなり怖かったようです。
戻ってきてからは看護師が医療処置をたくさんするというより、リハビリを中心にしながら、看護では生活習慣や再発予防について一緒に考えるような関わりが増えました。
以前と同じ生活へそのまま戻すのではなく、
これからどう生活していこうか。
と本人と考える。
その結果、生活の仕方も少しずつ変わっていきました。
これも、救急搬送して病院へつないだから終わりではないんですよね。
病院で治療して、また家へ戻ってきたあと、その人の生活へどうつなげるか。
そこまで続いています。
誰か一職種へ任せきりになると、利用者さんが困る
逆に、連携がうまくいかないと困ることもあります。
例えば皮膚トラブルが出てきた利用者さんがいたとします。
訪問看護が入るのは週2回。
それ以外の日にはヘルパーさんが入っている。
看護師として、
このままだと悪化しそうだから、日常的にここを気にしてほしい。
と思っていても、ヘルパーさんへ何も伝わっていなければ、当然いつも通りのケアになります。
処置について医師へ相談したいけれど連絡がなかなかつかない。
ケアマネジャーへ伝えても、
とりあえず訪看さんでお願いします。
となる。
でも訪問看護がいない日の方が多い。
これでは、
いや、訪看だけでどうにかする話じゃないでしょう。
となります。
医師には必要な医療的判断をしてもらう。
ケアマネジャーには必要に応じてサービスを調整してもらう。
ヘルパーさんには、日常のケアの中で気をつけてほしいところを伝える。
訪問看護は状態を見ながら、それぞれに必要な情報を返す。
誰か一職種へ全部任せてしまうと、どこかに穴が開きます。
訪問看護へ任せきりで、ケアマネジャーや医師となかなか連絡が取れない状態になると、一番困るのは利用者さんです。
そこはできるだけ避けたいと思っています。
退院時の情報が完璧にそろっているとは限らない
訪問看護を開始するときは、病院やクリニックなどから、
訪問看護の介入は可能ですか?
と打診を受けて情報をもらい、そこから始まることもあります。
開始前に必要そうな内容はできるだけ確認します。
ただ、実際に家へ行ってみると、
聞いていた状態とちょっと違うな。
ということは普通にあります。
だからといって、
情報が違うので対応できません。
ではなく、実際の状態を確認して、必要な人へ改めて共有しながら対応していきます。
病院側も退院後の生活を全部予測できるわけではありません。
自宅へ帰ったことで状態が変わる人もいます。
そこから先を地域の人たちでつないでいく。
そんな感覚です。
初回訪問で事前にどんな情報を確認し、実際の生活をどう見ているのかはこちらの記事で詳しく書いています。

新人さんが「誰に聞けばいいか分からない」ときこそ事業所の役割だと思う
訪問看護へ来たばかりなら、
これ医師へ言うこと?
ケアマネさん?
とりあえず管理者?
と分からないこともあると思います。
それで普通です。
自分は、全部を一人で解決できる看護師を最初から求めるより、新人さんが相談できる環境を作ることの方が大切だと思っています。
迷ったら先輩へ聞く。
先輩も分からなければ管理者へ聞く。
必要なら一緒に医師へ連絡する。
それを繰り返して、
この場合はこの人へ相談すればいいんだ。
と覚えていけばいい。
新人さんを育てることは、その人のためだけでもありません。
相談できずに判断が遅れれば、困るのは利用者さんです。
逆に早い段階で相談してくれれば、先輩スタッフが後から大きな問題のフォローへ回る仕事も減ります。
なので、
新人を育てる環境を作ることも、結局は利用者さんのためになる
と思っています。
訪問看護未経験で転職するときの同行や教育体制、相談できる職場の大切さについてはこちらにも書いています。

転職先を見るならICT環境も少し気にしている
多職種連携だけを理由に転職先を選んだことはありません。
ただ、今ならICT環境は少し気にします。
訪問看護は事業所の外にいる時間が長いので、必要な情報を確認したり、他のスタッフへ共有したりする環境は大切です。
自分としては、紙だけで情報を追いかける職場はちょっとしんどいかなと思います。
もちろん、
電子カルテだから良い事業所。
紙だから悪い事業所。
という単純な話ではありません。
大切なのは、外にいるスタッフ同士でも必要な情報へアクセスできて、何かあったときに相談できることです。
ICTが整っていても、誰も返事してくれなかったら意味ないですからね。
なので面接なら、システムの名前だけではなく、
訪問中に判断へ迷ったときは、普段どう相談していますか?
くらいは聞いておいてもいいと思います。
訪問看護の面接で確認しておきたい内容はこちらにまとめています。

まとめ|「この人が困らないためには?」と考えると自然と連携につながる
訪問看護では一人で利用者さんのお宅へ行きます。
でも、一人でその人の生活を支えているわけではありません。
医師がいる。
ケアマネジャーがいる。
ヘルパーさんがいる。
薬剤師さんがいる。
病院やクリニックのスタッフが関わることもあります。
それぞれ専門としていることも、利用者さんを見る時間も違います。
だから自分は、
看護師なんだから自分で全部分からないと。
とは考えていません。
むしろ、
この情報は誰に伝えれば、この人が困らずに済むだろう。
と考えます。
薬が飲めないなら薬剤師さんへ相談するかもしれない。
サービスが足りないならケアマネジャーへつなぐ。
体調が変わったなら医師へ報告する。
毎日家へ入っているヘルパーさんが一番よく知っていることもある。
そして自分だけでは分からなければ、まず同じ事業所のスタッフへ相談すればいい。
多職種連携をするために連携するのではなく、利用者さんが困らないように考えたら、自然と必要な人へつながっていく。
自分はそんな感覚で働いています。
訪問看護へ転職したばかりだと、誰へ相談したらいいのか分からないこともあると思います。
でも、それも一つずつ経験して覚えていけばいいです。
訪問は一人で行く。
でも、一人で看護しているわけではありません。
そこが分かってくると、在宅で一人で訪問することへの不安も、少しは軽くなるんじゃないかなと思います。
訪問看護の仕事内容や働き方、転職先の選び方などをまとめて読みたい方はこちらです。



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