※この記事は、自分が病院や複数の訪問看護ステーションで働いた経験をもとにしています。働き方や給与、休暇制度などは事業所によって異なります。
訪問看護に興味があっても、
- 一人で利用者宅へ行くのが不安
- オンコールがきつそう
- 病棟より本当に働きやすいのか
と迷う人は多いと思います。
自分が訪問看護へ移って一番良かったと感じているのは、働き方と看護の自由度が高くなったことです。
直行直帰で、自分のペースで訪問する。
利用者本人の希望や生活を見ながら、必要なケアを考える。
病棟では難しかった働き方が、訪問看護ではできるようになりました。
一方で、運転や気温差、利用者宅ごとに異なる環境など、病棟にはなかった負担もあります。
それでも自分の場合は、デメリットを上回るメリットがあり、訪問看護へ移ったことを後悔していません。
この記事では、病棟勤務と比較しながら、訪問看護のメリット・デメリットを紹介します。
訪問看護師の実際の勤務時間や訪問件数については「訪問看護師の1日の流れ|直行直帰・訪問件数・記録の実際を紹介」にまとめています。
訪問看護で感じた6つのメリット
1.働き方の自由度が高い
自分が訪問看護へ移って最も良かったと感じているのは、自由度の高さです。
現在は社用車を使った直行直帰が基本で、必要がなければ朝夕に事業所へ立ち寄ることもありません。
訪問予定についても、職場の体制や利用者の都合を踏まえながら、
- 私生活の予定がある日は時間外訪問を入れない
- 収入を増やしたい月は訪問を増やす
- 希望休や有給休暇を使って旅行へ行く
- 訪問の合間に記録や休憩を取る
といった調整ができます。
もちろん、勤務時間中に好き勝手に過ごせるという意味ではありません。
必要な訪問、記録、報告を行ったうえで、自分の生活に合わせて一日の動きを組み立てやすいということです。
病棟では、受け持ち患者、入退院、ナースコール、スタッフ数などに合わせて動く必要がありました。
訪問看護では、決められた訪問予定を軸に、自分のペースで仕事を進めやすいと感じています。
2.一人の利用者と落ち着いて向き合える
訪問看護では、1回30分以上、利用者や家族と関わることができます。
その訪問時間は、基本的に目の前の利用者のための時間です。
- 体調を確認する
- 薬の管理方法を一緒に考える
- 家族の介護負担を聞く
- 生活環境を確認する
- 本人がどのように暮らしたいのかを聞く
こうしたことを、病棟よりも落ち着いて行えます。
病棟でも一人ひとりと丁寧に関わりたいと思っていましたが、複数の患者を同時に担当していると、一人だけに時間を使い続けるのは難しい場面がありました。
訪問看護では、病気や処置だけでなく、その人がどのような生活を送り、何を大切にしているのかまで見やすくなります。
3.生活全体を見て、必要なケアを考えられる
病院では、患者の生活について、本人や家族から聞いた情報をもとに考えることが中心です。
訪問看護では、実際の生活環境を自分の目で確認できます。
- 薬がどこに置かれているか
- 食事をどのように準備しているか
- トイレまで安全に移動できるか
- 家族がどこまで介護しているか
- 室温や衛生環境はどうか
- ペットや喫煙が生活へどう影響しているか
「薬を飲んでいる」と聞いていても、実際には大量に残っていることがあります。
「一人で歩ける」と聞いていても、自宅では家具や段差が障害になっていることもあります。
生活全体を見ることで、その人に本当に必要な支援を考えやすくなります。
同時に、自分が医療者側の正しさを押し付けていたと気づくこともありました。
安全や治療のために必要な説明はあります。しかし、自宅で生活している人には、それまで続けてきた習慣や大切にしている価値観があります。
訪問看護では、
本人が望む暮らしをなるべく変えずに、安全を保つにはどうすればよいか
を一緒に考えます。
自分にとって、在宅で生活する人と伴走できることは、訪問看護を続けたい大きな理由です。
4.自分で考えたケアを提案・実践しやすい
訪問看護では、その利用者に何が必要なのかを自分で考え、提案しやすいと感じています。
病棟では、本当は別の方法がよいと思っていても、
- 先輩の方針
- 病棟内の慣習
- 上司の意向
- 業務上の都合
に合わせざるを得ないことがありました。
訪問看護では、本人や家族の希望を確認しながら、必要だと考えたケアを提案できます。
もちろん、自分の判断が常に正しいわけではありません。迷った時には、管理者やほかのスタッフ、主治医、ケアマネジャーなどへ相談します。
それでも、自分で考えたケアの後に、利用者や家族が安心した表情を見せてくれると、仕事へのやりがいを感じます。
5.集団の人間関係で消耗しにくい
病棟では、多くのスタッフと同じ場所で働き続けます。
協力は必要ですが、
- 誰かの噂話
- スタッフ同士の派閥
- ほかの人が行った処置への批判
- 周囲の機嫌への配慮
- 集団内での同調圧力
など、看護以外の部分で疲れることもありました。
訪問看護では、一人で利用者宅へ向かう時間が多く、スタッフ同士が常に同じ空間にいるわけではありません。
必要な時には電話で相談し、情報は記録で共有します。
もちろん、訪問看護でも人間関係がなくなるわけではありません。利用者、家族、医師、ケアマネジャー、ヘルパーなど、多くの人と関わります。
ただ、自分には、大勢の中で常に周囲へ配慮する働き方より、必要な相手と個別に関係を築く方が合っていました。
6.夜勤がなく、休暇や収入を調整しやすくなった
訪問看護は、基本的には日勤中心です。
病棟勤務で経験していた、
- 夜中に出勤する
- 深夜に食事を取る
- 朝日とともに採血や処置を行う
- 日中に眠る
- 生活リズムが崩れる
といった負担が少なくなりました。
現在の職場では、希望休や有給休暇も比較的取りやすく、旅行や連休のために使えています。
収入についても、自分の場合は、通常勤務で生活の土台を作り、余裕がある時には時間外訪問やオンコールを担当するという調整ができます。
ただし、すべての訪問看護ステーションで同じ働き方ができるわけではありません。
給与や休暇については、事業所による差が大きいため、求人票や面接で具体的に確認する必要があります。
関連記事:訪問看護師の給料は高い?求人票で確認したい固定残業代・手当・賞与
関連記事:訪問看護は休みやすい?直行直帰・希望休・有給休暇の実態を解説
訪問看護で感じた5つのデメリット
1.運転する時間が多い
訪問看護では、利用者宅を移動するため、運転する時間が多くなります。
病棟では勤務中に交通事故を起こす心配はほとんどありませんでしたが、訪問看護では毎日その危険があります。
渋滞や駐車場所の問題もあり、訪問時刻が近づくと焦ることもあります。
自分は、移動時間に余裕を持ち、少し早めに出発するようにしています。
運転が苦手な人や、訪問地域の道路が狭い事業所では、負担になりやすい部分です。
2.暑さや寒さ、天候の影響を受ける
利用者宅への移動やケアでは、気温や天候の影響を受けます。
真夏の車内へ戻った時や、冷房の効きにくい家でケアをする時は、滝汗です。
冬は手が冷たくなり、そのまま利用者さんに触れると、びっくりさせてしまいます。
雨の日には足元や荷物が濡れることも、もちろんあります。
ただ、飲み物、着替え、雨具、替えの靴下などを準備することで、ある程度は対応できます。
なので鞄には色々準備していて、いざというとき使えるように、と心構える毎日です。
訪問で使っていたものなどについては「訪問看護師の持ち物は何が必要?毎日使うもの・貸与品・便利だったものを紹介」にまとめています。
3.利用者宅ごとに環境が違う
病院では、医療用品や設備がある程度決められた場所にあります。
訪問看護では、利用者宅によって環境がまったく異なります。
- 必要な物品がない
- 部屋が狭い
- 家族が訪問中ずっと見ている
- ペットがいる
- 室内に虫がいる
- 喫煙している
- 監視カメラがある
といったこともあります。
こうした環境を、看護師の都合だけですべて変えることはできません。
利用者の暮らしを尊重しながら、安全性や衛生面で改善が必要な部分を探します。
必要に応じて、ケアマネジャー、ヘルパー、家族、行政などと連携することも、訪問看護の仕事です。
4.一人で判断する場面がある
訪問中は、基本的に一人で利用者宅へ入ります。
目の前で利用者の状態が変化した時、最初に判断して動くのは自分です。
そのため、
- 過去の記録を読む
- 疾患について調べる
- 家族背景を確認する
- 注意事項を見る
- 不安な点を事前に相談する
といった準備が欠かせません。
ただし、一人で訪問することと、一人ですべてを背負うことは別です。
判断に迷えば、管理者やほかのスタッフへ電話で相談できます。必要であれば、主治医やケアマネジャーとも連携します。
相談しやすい体制があるかどうかは、事業所選びで確認したい重要なポイントです。
5.オンコールによる生活上の制限がある
オンコールを持つ日は、電話へ出られる状態で過ごし、必要であれば利用者宅へ訪問します。
そのため、
- 遠方へ行けない
- 飲酒できない
- すぐ運転できる状態でいる
- 睡眠中に電話で起こされる可能性がある
といった制限がありますが、これらは手当が発生する以上仕事だと思いますので、負担感は人それぞれです。
ただし、同じオンコールでも、
- 待機手当
- 電話・出動手当
- 担当回数
- 夜間出動後の勤務調整
- 複数人での相談体制
によって負担感は大きく変わり、事業所によって大きく異なります。
メリットもデメリットも事業所によって変わる
訪問看護の働きやすさは、事業所によって大きく変わります。
特に差が出やすいのは、次の項目です。
- 管理者の考え方
- 職員数
- 給与
- オンコール手当
- 1日の訪問件数
- 訪問間の移動時間
- 教育・相談体制
- 休暇の取りやすさ
- 訪問以外の業務
- 社用車や貸与品
訪問看護という働き方自体が悪いのではなく、事業所の運営方法によって働きにくくなっている場合があります。
求人に、
- やる気のある人を募集
- やりがいを重視
- アットホームな職場
といった抽象的な言葉だけが並び、具体的な給与や業務内容が分からない場合は、見学や面接で確認した方がよいと思います。
「夜勤なしで高収入」だけで選ぶのは慎重に
訪問看護の求人では、
- 夜勤なしで高収入
- 月収50万円も可能
- 年収600万円を目指せる
といった表現を見ることがあります。
実際に、その水準の収入を得られる職場もあると思います。
ただし、月収や年収が高い場合には、
- 多くの訪問件数
- 時間外訪問
- オンコール
- 夜間の緊急出動
- 土日祝日の勤務
- インセンティブ
- 管理者業務
- 固定残業代
などが含まれている可能性があります。
最大月収だけで判断せず、基本給、勤務時間、訪問件数、オンコール、手当の計算方法まで確認することが必要です。
訪問看護を一度見てほしい人
訪問看護へ必ず転職する必要はありません。
ただ、次のような人には、一度見学してほしいと思っています。
- 今の職場に不安を感じている
- 集団の人間関係に疲れている
- 夜勤を続けることが難しい
- 一人の利用者と丁寧に関わりたい
- 自分の看護に自信を失っている
- 病棟以外の働き方を知らない
現在の職場だけを基準に、
自分は看護師に向いていない
どこへ行っても同じだろう
と決めてしまうのは、もったいないと思います。
環境が変われば、発揮できる力も変わります。
自分も病棟勤務でつらい経験をしましたが、そこで身につけた技術や考え方は、現在の訪問看護でも生きています。
今のところ、病棟へ戻る予定はありません。
在宅で生活する利用者と一緒に、これからの暮らしを考えること。本人や家族の反応を見ながら、必要なケアを考えられること。
そうした訪問看護の楽しさを知ったため、今の働き方を続けたいと考えています。
まとめ|病棟が合わなくても、看護師に向いていないとは限らない
訪問看護で自分が感じている主なメリットは、次のとおりです。
- 働き方の自由度が高い
- 一人の利用者と向き合いやすい
- 生活全体を見てケアを考えられる
- 集団の人間関係で消耗しにくい
- 夜勤がなく、生活リズムを整えやすい
- 事業所によっては休暇や収入を調整しやすい
一方で、次のようなデメリットもあります。
- 運転が多い
- 暑さや寒さの影響を受ける
- 利用者宅ごとに環境が異なる
- 一人で判断する場面がある
- オンコールによる生活上の制限がある
ただし、これらの負担は、事業所の体制によって大きく変わります。
訪問間の時間が確保され、いつでも相談でき、夜間対応後の勤務調整があり、仕事に見合った手当が支給される職場であれば、負担は軽減できます。
病棟が合わなかったからといって、看護師に向いていないとは限りません。
訪問看護に興味があるなら、最初から転職を決める必要はありません。
まずは見学し、働き方や事業所の雰囲気が自分に合うかを確認してみてください。
訪問看護に関する記事をまとめて読みたい方は、「訪問看護ガイド」をご覧ください。仕事内容や給料、オンコール、職場選びなどを一覧で紹介しています。


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