訪問看護の求人票を見ていると、
- 月給30万円以上
- 年間休日120日
- 残業少なめ
- 頑張った分だけ給与へ還元
- 未経験者歓迎
- スタッフ第一の職場
といった、魅力的な言葉が並んでいます。
ただし、求人票に書かれた数字や言葉だけで、働きやすい事業所かどうかを判断することはできません。
月給が高く見えても、固定残業代やオンコール手当が含まれていることがあります。
年間休日が多くても、オンコール当番によって自由に過ごせない日が多い場合もあります。
「訪問看護業務全般」の中に、営業やSNS運用、採用活動、管理者業務の補助まで含まれていることもありました。
自分はこれまで複数の訪問看護ステーションで働き、事業所の立ち上げや運営にも関わってきました。
その中で感じたのは、求人票では良い条件に見えても、実際に働いてみると大きな差があるということです。
この記事では、訪問看護の求人票を見るときに確認したいポイントを、実体験をもとに紹介します。
求人票では「金額の高さ」より内訳を見る
求人票を見ると、どうしても月給や年収の数字に目が向きます。
しかし、大切なのは金額そのものよりも、何をすればその給与になるのかです。
例えば、同じ月給30万円でも、次のような違いがあります。
- 基本給が高く、手当が少ない
- 基本給が低く、固定残業代で補っている
- オンコールを複数回担当することが前提
- 月の訪問件数を達成した場合のインセンティブ込み
- 緊急出動手当まで含めたモデル給与
求人票では、給与の総額だけでなく、基本給と各手当の内訳まで確認してください。

求人票で最優先したい3つのポイント
自分が訪問看護の求人票を見るとき、特に重視するのは次の3つです。
1.給与の内訳
月給の金額だけでなく、基本給、固定残業代、資格手当、訪問手当、オンコール手当などを確認します。
2.スタッフの人数
スタッフが少ない事業所では、オンコール、緊急訪問、休日の代行などの負担が集中しやすくなります。
有給休暇の取りやすさも、スタッフ数の影響を受けます。
3.訪問件数
1日の訪問件数は、実際の忙しさを判断する大きな目安です。
ただし、件数だけでなく、訪問時間や移動距離も合わせて確認する必要があります。
月給で確認したいポイント
基本給が低すぎないか
月給が高く見えても、基本給が低く、複数の手当で金額を高く見せている求人があります。
特に注意したいのが賞与です。
賞与は基本給を基準に計算されることが多いため、月給が高くても、基本給が著しく低ければ賞与額も低くなる可能性があります。
例えば、月給が30万円でも、基本給が18万円で残りが各種手当という給与形態では、想像していた賞与額と大きく違うことがあります。
求人票では、次の項目を分けて確認してください。
- 基本給
- 資格手当
- 訪問手当
- オンコール手当
- 固定残業代
- その他の調整手当
「月給○万円」だけで判断しないことが大切です。
固定残業代が含まれていないか
固定残業代がある求人では、何時間分が給与に含まれているのかを確認します。
固定残業代そのものだけで、悪い職場と決めつけることはできません。
ただし、毎月5万円や7万円など大きな金額が設定されている場合は、それだけの残業を想定した給与設計なのか気になります。
求人票では、次の点を確認してください。
- 固定残業代の金額
- 何時間分に相当するのか
- 実際の月平均残業時間
- 想定時間を超えた場合の扱い
「残業少なめ」と書かれていても、固定残業代が多く設定されている場合は、面接で実態を聞いた方がよいと思います。

オンコールやインセンティブ込みではないか
「諸手当込み」「モデル月給」と書かれている場合は、オンコールや緊急出動、訪問件数によるインセンティブが含まれている可能性があります。
例えば、月給35万円と書かれていても、
万円と書かれていても、
- オンコールを月10回担当
- 夜間出動あり
- 月100件以上訪問
- 土日勤務あり
という条件で達成する給与であれば、誰でも同じ金額を受け取れるわけではありません。
モデル給与を見るときは、
どのような働き方をした場合の金額ですか?
と確認することが大切です。
試用期間中の条件も確認する
試用期間中だけ給与が下がる求人もあります。
試用期間の設定自体が悪いわけではありませんが、求人票の目立たない場所に小さく書かれている場合があります。
- 試用期間の長さ
- 試用期間中の基本給
- 手当や賞与の対象になるか
- 本採用後の給与との差
まで確認しておきましょう。
賞与と年収で確認したいポイント
賞与は何を基準に計算するのか
「賞与3か月分」と書かれていても、月給30万円の3か月分とは限りません。
基本給18万円を基準にする場合は、単純計算で54万円です。
月給の総額だけを見ていると、想像していた賞与と差が出る可能性があります。
求人票では、
- 賞与の基準となる金額
- 前年度の支給実績
- 入職初年度の支給条件
- 業績による変動の有無
を確認してください。
「業績による」だけでは判断できない
訪問看護ステーションも事業である以上、業績によって賞与が変動することはあります。
ただし、過去の支給実績がある場合は、面接で聞いてみてもよいと思います。
特に立ち上げ直後の事業所では、代表者の考え方が表れます。
立ち上げに協力した職員の努力を評価する事業所もあれば、「立ち上げたばかりだから払えなくて当然」と考える事業所もあります。
支給額だけでなく、スタッフの働きをどのように捉えているかも見ておきたいところです。
「年収○万円可能」の条件を確認する
「年収500万円以上可能」と書かれている求人は魅力的に見えます。
しかし、その金額が、
- 管理者として働いた場合
- オンコールを多く担当した場合
- 緊急出動を多数行った場合
- 大量の訪問をこなした場合
- 残業や休日出勤をした場合
の年収である可能性があります。
働いた分だけ収入が増える仕組みは、希望する人にとっては悪くありません。
一方で、ワークライフバランスを重視する人には合わない場合があります。
上限の金額だけでなく、一般スタッフの平均的な年収も確認してください。
休日で確認したいポイント
「週休2日制」と「完全週休2日制」は違う
この2つは似ていますが、意味が異なります。
求人票を見るときは、言葉だけで判断せず、実際に月何日休めるのかを確認した方が分かりやすいです。
現在は週休3日制を採用している訪問看護ステーションもあります。
スタッフ間で連携が取れ、給与条件にも納得できるのであれば、週休3日制も選択肢になると思います。
年間休日の内訳を見る
年間休日120日と書かれていても、年末年始休暇や特別休暇が含まれている場合があります。
また、休日でもオンコールを持つ場合は、遠出や飲酒ができず、完全に自由な休日とは感じにくいこともあります。
確認したいのは、次の項目です。
- 毎月の公休日数
- 祝日の扱い
- 年末年始休暇
- 夏季休暇
- オンコール当番日の扱い
- 休日出勤時の振替休日
「年間休日が多い」という数字だけではなく、どのような休み方になるのかを見てください。
有給休暇の取りやすさはスタッフ数にも左右される
求人票に「有給取得を推奨」と書かれていても、実際に休めるかどうかは別の問題です。
少人数の事業所では、一人が休むと、ほかのスタッフが訪問を代行しなければなりません。
利用者さんとの関係や医療処置の内容によっては、誰でも代行できるとは限りません。
そのため、有給休暇の取りやすさを見るときは、
- 看護師の人数
- 非常勤スタッフの人数
- 一人当たりの担当利用者数
- 休暇時の代行方法
まで確認した方がよいと思います。
勤務時間と残業で確認したいポイント
1日の訪問件数を見る
勤務時間が8時30分から17時30分でも、1日の訪問件数によって忙しさは大きく変わります。
1日5件と10件では、移動、記録、連絡に使える時間がまったく違います。
求人票に平均訪問件数が書かれていない場合は、面接で確認してください。
電子カルテや端末の有無を見る
訪問看護では、記録方法も働きやすさに影響します。
iPadやスマートフォンから電子カルテを入力できれば、訪問先や空き時間に記録を進められます。
一方で、手書き記録や事業所内のパソコンでしか入力できない場合は、訪問後に事務所へ戻る必要があります。
確認したいのは、次の項目です。
- 電子カルテを使用しているか
- タブレットやスマートフォンが貸与されるか
- 訪問先で記録できるか
- 自宅へ記録を持ち帰ることがあるか
- 直行直帰できるか
電子化されていないこと自体が悪いわけではありません。
ただし、記録にかかる時間や移動の負担は大きくなりやすいと思います。
直行直帰できるか
毎朝、毎夕、必ず事業所へ立ち寄る必要がある職場もあります。
自宅と訪問先の位置によっては、大きな遠回りになります。
直行直帰を希望する場合は、
- 直行直帰が可能か
- 週何回まで可能か
- オンコール時も直帰できるか
- 記録や物品補充のために戻る必要があるか
を確認してください。
訪問件数とインセンティブで確認したいポイント
件数だけでなく、訪問時間と移動距離を見る
「1日5〜6件」であれば、必ず余裕があるとは限りません。
60分訪問が多いのか、30分訪問が多いのかによって違います。
訪問エリアが広ければ、移動にも時間がかかります。
確認したいのは、次の4点です。
- 1日の平均訪問件数
- 1件当たりの訪問時間
- 訪問と訪問の間の移動時間
- 訪問エリアの広さ
件数だけで忙しさを判断しないようにしましょう。
インセンティブが始まる件数を確認する
「月80件以上でインセンティブ」と書かれている場合は、80件が現実的に達成できる件数なのかを確認します。
常勤スタッフの平均件数が月70件程度であれば、インセンティブを受け取れる人は限られるかもしれません。
また、次の点も確認してください。
- キャンセルされた訪問は件数に含まれるか
- 30分訪問と60分訪問で単価が違うか
- 同行訪問は件数に含まれるか
- 緊急訪問の扱い
- 記録や報告書を作成する時間が確保されているか
「頑張り次第で高収入」は条件を見る
「頑張った分だけ還元」「やる気次第で高収入」「年収○万円も目指せる」といった言葉だけでは、具体的な働き方が分かりません。
悪い言葉と決めつける必要はありませんが、
具体的に何件訪問し、何回オンコールを担当すれば、その給与になるのか
を確認してください。
数字を出さず、意欲や頑張りばかりを強調する求人には慎重になった方がよいと思います。
オンコールで確認したいポイント
スタッフ数が少ない事業所は担当回数が増えやすい
看護師の人数が少ない事業所では、一人当たりのオンコール担当回数が多くなります。
「オンコール相談可」と書かれていても、入職後に断りにくくなる可能性があります。
求人票では、次の項目を確認してください。
- オンコールを担当するスタッフ数
- 一人当たりの月平均回数
- 月の電話件数
- 月の緊急出動件数
- 平日と休日の手当
- 緊急出動手当
- 出動翌日の勤務調整
「持てる方歓迎」の背景を確認する
「オンコールを持てる方歓迎」という表現は、担当できる人が不足している可能性もあります。
一部のスタッフだけに負担が集中していないか確認してください。
オンコールを持つこと自体は、経験を積み、収入を増やす機会にもなります。
ただし、夜間出動の翌日に訪問件数を減らすなど、職員の負担を考慮する体制があるかが重要です。
車と訪問手段で確認したいポイント
「車通勤可」と「自家用車で訪問」は別
車通勤ができることと、自家用車を使って利用者宅を訪問することは別です。
自家用車で訪問する場合は、
- ガソリン代
- 車両手当
- 駐車場代
- 修理費
- タイヤやオイルなどの維持費
- 事故時の保険
- 走行距離
- 車内での物品管理
を確認する必要があります。
距離に応じたガソリン代だけでは、車両の維持費まで十分に賄えない場合があります。
路上駐車によるトラブルや、事故時の責任も気になるところです。
自分は、車で訪問するのであれば、社用車が用意されている事業所を選びたいと考えています。
少なくとも、訪問に必要な駐車場代や交通費を、職員個人へ負担させる事業所には注意が必要です。
「訪問看護業務全般」の範囲を確認する
求人票に書かれた「訪問看護業務全般」には、事業所によってさまざまな仕事が含まれます。
自分が経験した中では、次のような業務がありました。
- 営業
- 新規契約
- 請求業務
- SNS運用
- チラシ作成
- 採用活動
- 委員会
- 勉強会の準備
- 掃除や物品管理
- 管理者業務の補助
看護師が訪問以外の仕事を担当すること自体は、必ずしも悪いことではありません。
問題は、入職前に説明がなく、業務量や待遇を調整しないまま任されることです。
代表者や管理者が率先して動き、できない部分をスタッフへ協力してもらう職場と、責任を持たずにスタッフへ丸投げする職場では大きな違いがあります。
担当業務が増えるのであれば、役職や手当などに反映されるかも確認したいところです。
「未経験歓迎」と教育体制を見るポイント
独り立ちの基準を確認する
「未経験者歓迎」「丁寧に指導します」という言葉だけでは、教育内容は分かりません。
確認したいのは、次の項目です。
- 同行訪問の期間
- 独り立ちの判断基準
- 判断する人
- 訪問中の相談先
- 管理者不在時の相談先
- 医療処置を学ぶ方法
- 難しいケースへの同行体制
独り立ちの基準が分かれば、自分も入職後の心構えをしやすくなります。
医療処置は段階的に経験できるか
利用者さんは、看護技術を練習するための相手ではありません。
経験の少ない処置を担当する場合は、
- 事前に知識を確認する
- 経験者の処置を見学する
- 同行者と一緒に実施する
- 安全にできることを確認して独立する
という流れが必要です。
訪問看護では、病院のような固定のプリセプターがいない事業所も多く、同行する看護師が毎回違う場合もあります。
人によって方法が異なることもありますが、その中から安全で利用者さんに合う方法を考え、自分の看護へ落とし込む力も必要です。
求人票で慎重に見たい言葉
次の言葉が書かれているだけで、悪い事業所と判断する必要はありません。
ただし、具体的な裏付けがなければ、そのまま信用しない方がよいと思います。
アットホームな職場
職員同士の距離が近く、相談しやすい可能性があります。
一方で、仕事とプライベートの境界が曖昧だったり、過度な飲み会や私生活への干渉があったりする場合もあります。
スタッフ第一
言葉ではなく、管理者や代表者が実際に何をしているかを確認します。
業務量の調整や休暇の取得、トラブル時の対応などに表れます。
風通しの良い職場
相談しやすい職場なのか、話した内容がすぐに広がる職場なのかは大きく違います。
情報共有の方法や、個人的な相談をどのように扱うのかを確認してください。
頑張りを評価
評価することは、本来当然のことです。
何をどのように評価し、給与や役職へどう反映するのかを聞きましょう。
高収入可能
何件訪問し、何回オンコールを持ち、どのような役職になれば達成できるのかを確認します。
若手活躍中
若いスタッフが多いこと自体は良いことです。
ただし、長く勤務しているスタッフがいるか、教育体制が整っているかも合わせて見てください。
急成長中
利用者数や拠点数が急増すると、情報共有や教育、管理体制が追いつかないことがあります。
代表者や管理者が組織をどのように整えているかが重要です。
オープニングスタッフ
立ち上げから関われるため、仕組みづくりに興味がある人には大きな経験になります。
一方で、業務内容が決まっておらず、看護以外の仕事まで幅広く担当する可能性があります。
立ち上げを一緒に経験したい人には向いていますが、訪問看護に集中したい人は慎重に考えた方がよいと思います。
管理職候補
将来的な昇進の機会がある一方で、現在の管理者が定着していない可能性もあります。
管理者の交代状況や、役職に就くまでの条件を確認してください。
信頼しやすい求人票の特徴
自分が比較的信頼しやすいと感じるのは、良い言葉が多い求人ではなく、条件が具体的に書かれている求人です。
例えば、次のような情報です。
- 基本給と各手当の内訳
- 固定残業代の時間数
- 賞与の前年度実績
- 1日の平均訪問件数
- 30分訪問と60分訪問の割合
- 看護師とリハビリ職の人数
- オンコールの平均回数
- 月の電話件数と緊急出動件数
- 訪問手段と交通費の負担
- 同行期間と独り立ちの基準
- 平均残業時間
- 直行直帰の可否
- 訪問以外に担当する業務
条件が具体的であるほど、応募者へ誠実に情報を伝えようとする姿勢を感じます。
反対に、数字が少なく、「やりがい」「成長」「アットホーム」といった抽象的な言葉ばかりの求人は、面接で詳しく確認した方がよいと思います。
まとめ
訪問看護の求人票では、月給や年間休日の数字だけで判断しないことが大切です。
自分が最初に確認するのは、次の3つです。
- 給与の内訳
- スタッフの人数
- 1日の訪問件数
そのうえで、賞与、オンコール、訪問手段、教育体制、業務範囲を確認します。
求人票に良い言葉を書くことは簡単です。
大切なのは、
その言葉を裏付ける具体的な数字や仕組みがあるか
を見ることです。
「スタッフ第一」と書かれているなら、休暇や業務調整の方法を確認する。
「頑張りを評価」と書かれているなら、評価基準と給与への反映方法を聞く。
「高収入可能」と書かれているなら、どのような働き方をすれば達成できるのかを確認する。
求人票だけで分からない部分は、面接や見学で質問してください。
訪問看護は、同じ仕事でも事業所によって働きやすさが大きく変わります。
焦って決めず、複数の求人を比較し、自分が無理なく続けられる職場を選ぶことが大切です。
この記事が、訪問看護へ転職したあとに「もっと確認しておけばよかった」と後悔する人を減らすきっかけになればうれしいです。



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