訪問看護へ転職するとき、志望動機に何を書けばよいのか迷う方は多いと思います。
「利用者さん一人ひとりに寄り添いたい」
「生活の場で看護をしたい」
こうした思いは大切です。
ただし、これだけでは、なぜ自分が訪問看護を選んだのか、これまでの経験をどう生かせるのかまでは十分に伝わりません。
自分が初めて訪問看護へ転職したときは、専門病院、急性期、慢性期、小児、透析、地域包括ケア病棟、行政でのケアマネジャー業務など、これまでの経験を伝えました。
それぞれの経験が、病気だけでなく生活全体を見る訪問看護に必要だと考えていたからです。
面接官からは、「そこまで考えて訪問看護を選ぶ人は多くない」と言われました。
そのとき、自分の看護に対する思いが伝わった一方で、訪問看護に求めるものは人によって大きく違うのだと感じました。
この記事では、訪問看護の志望動機を作る手順と、状況別の例文、採用側が不安に感じやすいNG例を紹介します。
訪問看護の志望動機で見られていること
訪問看護の面接では、立派な文章を暗記して話せるかだけを見られているわけではありません。
主に確認されるのは、次のような点です。
- なぜ病院ではなく訪問看護なのか
- これまでの経験をどう生かせるのか
- 訪問看護の仕事内容を理解しているか
- なぜその事業所を選んだのか
- 長く働く意思があるか
- 利用者さんの自宅へ伺う者として礼節を守れるか
訪問看護では、看護師が一人で利用者さんの自宅へ伺う場面が多くあります。
医療知識や看護技術だけでなく、相手の生活空間へ入るための礼節、判断力、報告や相談ができることも重要です。
志望動機では、自分がやりたいことだけでなく、これまでの経験を使って事業所や利用者さんへ何を提供できるかまで伝えられると、説得力が増します。
志望動機を作る3つの手順
1.病院で印象に残った経験を振り返る
最初に、これまでの看護経験で印象に残っている場面を考えます。
例えば、次のような経験です。
- 退院後の生活が気になった
- 本人と家族の希望が異なり、調整の難しさを感じた
- がん患者さんの療養場所について考えた
- 入退院を繰り返す患者さんと関わった
- 医療処置だけでは生活上の問題を解決できなかった
- 退院支援を通して多職種と連携した
特別な成功体験でなくても構いません。
「もっとこう関われたのではないか」と感じた経験も、訪問看護を志す理由になります。
2.訪問看護で実現したいことへつなげる
次に、病院で感じたことを、訪問看護でどのように生かしたいか考えます。
例えば、
退院支援に関わる中で、退院後の生活環境によって療養の継続が難しくなる方がいることを知りました。生活の場で本人や家族と関わり、無理なく続けられる方法を一緒に考えたいと思いました。
という流れです。
「病院が嫌だったから辞めたい」で終わらせるのではなく、病院での経験から何を学び、次の職場で何を大切にしたいのかへ変換します。
3.その事業所を選んだ理由を加える
最後に、応募先の事業所を選んだ理由を加えます。
確認したいのは、次のような部分です。
- 対象としている利用者層
- がん、精神、小児、難病などの得意分野
- 看取りへの取り組み
- 教育や同行訪問の体制
- 多職種連携の考え方
- 事業所の理念
- 訪問エリアや地域との関わり
ホームページの理念をそのまま写すだけではなく、自分の経験や目指す看護と結びつけます。
貴事業所が力を入れている在宅看取りに関心があります。病院でがん患者さんと関わった経験を生かし(例えば実例があればそれを伝えて)本人と家族が納得できる療養生活を支えたいと考えています。
このように書けば、どの事業所にも使える志望動機ではなくなります。

退職理由の本音は、そのまま伝えない方がよい
訪問看護への転職を考える理由には、次のような本音もあると思います。
- 夜勤をやめたい
- 病院の人間関係に疲れた
- 閉鎖的な環境が合わない
- 給料を上げたい
- 通勤を楽にしたい
- 今の職場を早く辞めたい
これらの理由を持つこと自体は悪くありません。
働き方や生活を改善するために転職するのは、自然な選択です。
ただし、面接で本音をそのまま伝えると、
同じような問題が起きたら、またすぐに辞めるのではないか
と思われる可能性があります。
大切なのは、ネガティブな経験を隠すことではなく、その経験から学んだことへ言い換えることです。
言い換える前
病院の閉鎖的な環境や人間関係が合わなかったため、退職したいと思いました。
言い換えた後
病院勤務を通して、限られた入院期間だけでなく、退院後の生活まで見据えた看護の大切さを感じました。利用者さんの生活環境や価値観に合わせて、継続できる支援を考えたいと思い、訪問看護を志望しました。
嘘をつく必要はありません。
ただ、過去の不満を中心にするのではなく、そこで気づいた看護観や、今後実現したいことを中心に伝えます。
「利用者さんに寄り添いたい」だけでは弱い理由
「利用者さんに寄り添いたい」という言葉は、訪問看護の志望動機でよく使われます。
しかし、利用者さんへ寄り添うことは、訪問看護に限らず看護師として大切な姿勢です。
そのため、この言葉だけでは本人の経験や価値観が伝わりにくくなります。
説得力を出すには、次の3点を加えます。
- どのような経験をしたのか
- その経験から何を感じたのか
- 訪問看護でどのように関わりたいのか
弱い例
利用者さん一人ひとりに寄り添った看護がしたいと思い、訪問看護を志望しました。
具体的にした例
がん患者さんと関わる中で、本人が望む療養方法と家族の希望が異なり、調整の難しさを感じた経験があります。訪問看護では、本人と家族の生活や思いを継続して確認し、医療職とのつなぎ役として納得できる選択を支えたいと考えています。
「寄り添う」という言葉を使うことが悪いのではありません。
自分にとって寄り添うとは、具体的に何をすることなのかまで説明することが大切です。
病院での経験は、訪問看護でも必ず生かせる
訪問看護へ転職するとき、
病院経験が訪問看護で役立つのだろうか
と不安になる方もいると思います。
しかし、病院で経験したことは、さまざまな形で訪問看護に生かせます。
状態変化の判断
訪問看護では、利用者さんの小さな変化から、受診や医師への報告が必要かを判断していたと思います。
できていない、、、と思う方もいるかもしれませんが、絶対そんなことはありません。
何か、働いているときに「?」と思ったこと、それが状況変化のきっかけだったりします。
病院で培った観察力やアセスメント力は重要です。
転職の際は、心が弱っていることが多いかもしれませんが、少し、思い返してみてください。
医療処置
点滴、褥瘡処置、カテーテル管理、ストーマ管理など、病院で経験した処置は在宅でも必要になります。
病院と同じ環境ではないため、限られた物品や生活環境に合わせる力も求められます。
医療処置は、診療材料はクリニックが準備してくれたり家族が買ってくれたりしていますが、その限られた材料の中で対応します。
ある程度、応用力が必要です。
(病棟でやったら絶対怒られるだろうな、、、って方法でやったりすることもあります(; ・`д・´))
退院支援
病院で退院支援に関わった経験は、訪問看護で特に生かせます。
実際に自宅へ伺うと、
病院で話していた「自宅での生活」とは、こういうことだったのか
と気づく場面があります。
例えば内服管理の指導。
例えばインスリン自己注射の指導。
例えば、抗がん剤治療後の副作用に対する薬剤服用指導。
自宅の間取り、家族の介護力、経済状況、本人の生活習慣などを見て、退院支援の意味を改めて理解できることが多い、それが在宅です。
多職種連携
訪問看護では、医師、ケアマネジャー、介護職、リハビリ職、行政など、多くの関係者と連携します。
病院で行ってきた報告や相談、カンファレンスの経験も役立ちます。
病院で経験したことに、無駄なものはありません。
一つひとつの仕事へ丁寧に取り組んだ経験が、思いがけない場面で役立つことがあります。
訪問看護の志望動機|状況別の例文
そのまま提出するのではなく、自分の経験や応募先の特徴に合わせて調整してください。
すごく簡単に書いてありますが、志望動機欄にはちょうどいい分量かと思います。
例文1|病棟から初めて訪問看護へ転職する場合
病棟勤務を通して、入院中の治療だけでなく、退院後の生活を見据えた支援の大切さを感じてきました。退院指導を行っても、自宅の環境や家族の状況によって継続が難しい方もおられ、生活の場で本人に合った方法を一緒に考えたいと思うようになりました。これまで培った状態観察や医療処置、多職種との連携経験を生かし、利用者様とご家族が安心して在宅生活を続けられるよう支援したいと考え、志望しました。
例文2|急性期・慢性期・専門病院の経験を生かす場合
急性期病棟と慢性期病棟で勤務し、状態変化への対応、医療処置、退院支援に関わってきました。特に退院後も医療的な管理が必要な患者様と関わる中で、病院から在宅へ切れ目なく支援する重要性を感じました。これまでのアセスメント力と医療処置の経験を生かし、生活環境や本人の希望を踏まえた看護を提供したいと考えています。貴事業所が医療依存度の高い利用者様の支援に力を入れている点にも魅力を感じ、志望しました。
例文3|夜勤のない働き方へ変えたい場合
病棟勤務で夜勤を含む勤務を経験する中で、今後も長く看護師として働くために、生活とのバランスを整えたいと考えるようになりました。同時に、入院中だけでなく、退院後の生活まで継続して支援する看護に関心を持ちました。病棟で培った観察力や優先順位を判断する力を生かし、利用者様の生活に合わせた支援を行いたいと考えています。
夜勤をやめたいという希望を隠す必要はありません。
ただし、働き方の希望だけで終わらせず、訪問看護で何をしたいのかを加えます。
例文4|ブランクがある場合
家庭の事情により看護師としての勤務から離れていましたが、再び看護に携わりたいと考えています。以前は慢性期病棟で勤務し、患者様やご家族への説明、日常生活の支援、退院調整に関わってきました。ブランクがあるため、必要な知識や技術を改めて学びながら、これまでの経験を生かしたいと考えています。同行訪問などの教育体制が整っている貴事業所で、利用者様の生活に寄り添う看護を身につけたいと思い、志望しました。
「教えてもらいたい」だけで終わらず、自分でも学ぶ姿勢と、これまで提供できる経験を加えます。
例文5|訪問看護経験者が別の事業所へ転職する場合
訪問看護師として、慢性疾患の管理、医療処置、看取り、多職種との連携に携わってきました。働く中で、利用者様とご家族の意向を早い段階から確認し、療養方法を一緒に考えることの大切さを学びました。今後は、これまでの経験を生かしながら、特に在宅看取りや家族支援について深めたいと考えています。貴事業所が看取り支援とスタッフ間の相談体制を重視している点に共感し、志望しました。
避けたい志望動機と修正例
NG1|「勉強させてください」が中心
訪問看護は未経験ですが、多くのことを勉強させていただきたいです。
学ぶ姿勢は必要ですが、事業所は学校ではありません。
採用側からすると、本人が何を提供できるのかが見えません。
訪問看護は乱立してきているので、採用する側もややシビアです。
修正例
訪問看護は未経験ですが、病棟で培った状態観察や家族対応の経験を生かせると考えています。不足している知識は自分でも学び、同行訪問を通して安全に独り立ちできるよう努めます。
NG2|夜勤をしたくないことだけを伝える
夜勤がつらく、日勤だけで働ける訪問看護を希望しました。
これだけでは、訪問看護そのものへの関心が伝わりません。
中には、え?じゃぁコール番持てないってこと?って訝しげに思われることもしばしば。
修正例
今後も長く看護師として働くために生活とのバランスを見直したいと考えています。病棟での退院支援を通して在宅生活への関心が深まり、生活の場で継続的に支援したいと思い、訪問看護を志望しました。
NG3|一人で気楽に働けそう
訪問中は一人でも、訪問看護は一人だけで完結する仕事ではありません。
医師、ケアマネジャー、家族、介護職、ほかの看護師との連携が必要です。
それに、判断に迷ったときに相談できず、一人で抱え込む人だと思われる可能性があります。
気楽は気楽ですが、あくまで最低限の仕事ができて、得られる気楽さです。
NG4|前職への不満が中心
前の職場は人間関係が悪く、管理者も信用できなかったため退職しました。
事実であっても、面接では不満を長く話さない方がよいと思います。
修正例
前職での経験から、スタッフ間で相談し、情報を共有できる体制の大切さを学びました。今後は多職種やスタッフと連携しながら、利用者様へ継続した支援を提供できる環境で働きたいと考えています。
NG5|どの事業所にも使える内容
貴事業所の理念に共感し、利用者様へ寄り添った看護をしたいと思い志望しました。
理念のどこに共感したのか、自分のどの経験とつながるのかが分かりません。
応募先の特徴を一つ選び、自分の経験と結びつけてください。
採用側は志望動機以外の振る舞いも見ている
訪問看護では、第三者の自宅へ伺います。
そのため、面接時の振る舞いも重要です。
例えば、
- 相手の目を見て話せるか
- 清潔感のある身だしなみか
- 挨拶や言葉遣いが丁寧か
- 入室時にドアを丁寧に開けたりしめたりできているか
- 相手の話を最後まで聞けるか
- 自分の権利だけでなく役割や責任も考えられる発言ができるか
といった部分です。
たかが、ドアの閉め方のような小さな所作だけで、人柄をすべて判断することはできません。
しかし、利用者さんの生活空間へ入る仕事だからこそ、物や人を丁寧に扱う姿勢は見られます。
どれほど立派な志望動機を話しても、相手への礼節がなければ説得力は失われます。
志望動機への反応から、事業所との相性も分かる
志望動機は、採用してもらうためだけに伝えるものではありません。
自分が大切にしている看護について話したとき、管理者や代表者がどのような反応をするかを見る機会でもあります。
例えば、
- 利用者さんの生活を大切にしたい
- 看護の質を高めたい
- 家族支援にも関わりたい
- 多職種と連携したい
- 病院での経験を在宅へ生かしたい
という思いを伝えたときに、具体的な話へ発展する事業所もあります。
一方で、看護への考えを伝えても反応が薄く、訪問件数や売上の話ばかりをする事業所もあります。
どちらが自分に合うかは、本人が訪問看護へ何を求めるかによって異なります。
採用されるために相手へ合わせすぎると、入職後のミスマッチにつながります。
自分が大切にしたいことは、背伸びせずに伝えた方がよいと思います。
履歴書と面接では伝える量を変える
履歴書の志望動機は、長くなりすぎないようにまとめます。
基本は次の3点です。
- 訪問看護を志望したきっかけ
- 生かせる経験
- 応募先を選んだ理由
面接では、履歴書に書いた内容について、具体的な経験を加えて説明します。
履歴書の例
病棟で退院支援に携わる中で、退院後の生活環境に合わせた支援の重要性を感じ、訪問看護を志望しました。これまで培った状態観察や医療処置、多職種連携の経験を生かし、利用者様とご家族が安心して在宅生活を続けられるよう支援したいと考えています。貴事業所が力を入れている在宅看取りにも関心があり、志望いたしました。
面接で加える内容
- 印象に残っている患者さんとの経験
- 退院後の生活について感じたこと
- 病院経験をどう生かしたいか
- 応募先で取り組みたいこと
履歴書の文章を丸暗記するより、自分の言葉で補足できるように準備しておくと自然です。

まとめ
訪問看護の志望動機では、きれいな言葉を書くことよりも、自分の経験と看護観を具体的に伝えることが大切です。
基本の流れは次の3つです。
- 病院で経験したこと
- その経験から感じたこと
- 訪問看護で実現したいこと
「利用者さんに寄り添いたい」という思いも、その理由となった経験を加えることで、自分だけの志望動機になります。
夜勤や人間関係など、転職を考えた本音をすべて話す必要はありません。
ネガティブな経験から何を学び、今後どのような看護をしたいのかへ言い換えてください。
また、志望動機を伝えたときの事業所側の反応も大切です。
自分の看護への思いを受け止め、具体的な話をしてくれる事業所なのか。
良い言葉を並べるだけで、実際の取り組みが見えない事業所なのか。
面接は、自分を評価してもらうだけの場ではありません。
自分の価値観と、その事業所の方針が合っているかを確かめる場でもあります。
採用されるために自分を作りすぎず、これまでの経験と、これから大切にしたい看護を自分の言葉で伝えてみてください。



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