訪問看護の介護保険と医療保険の違い|どっちが優先?現場で感じる違いも解説

訪問看護・働き方

※この記事の制度に関する内容は、2026年8月時点の厚生労働省・地方厚生局等の公表資料をもとに確認しています。制度や報酬は改定されるため、実際の利用・請求時には最新情報をご確認ください。

訪問看護で働き始めると、かなり早い段階で出てくるのが、

「この利用者さんは介護保険?医療保険?」

という話です。

自分も最初は、

要介護なのに医療保険なの?

この人とこの人、同じ訪問看護なのになんで保険が違うの?

と思うことがありました。

制度だけ読んでいると、まあややこしいです。

別表。

特別訪問看護指示書。

加算。

公費。

次から次へと知らない言葉が出てきます。

ただ、訪問看護を始めたばかりの人に最初に伝えたいのは、いきなり全部暗記しなくても大丈夫ということです。

そして、介護保険だろうが医療保険だろうが、看護師として目の前でやることは基本的に変わりません。

利用者さんの体調を見る。困っていることを聞く。必要な処置やケアをして、必要なら医師やケアマネジャー、他職種と連携する。

保険が変わったからといって、玄関を開けたら別人になっているわけではありません。

利用者さんは利用者さんです。

この記事では、細かな算定要件を全部覚えるためではなく、訪問看護師として最低限知っておきたい介護保険と医療保険の違いを、現場で感じる違いも含めて紹介します。

訪問看護には介護保険と医療保険がある

訪問看護には、大きく分けて、

  • 介護保険による訪問看護
  • 医療保険による訪問看護

があります。

ただし、

今月は医療保険の気分だからこっちで。

みたいに、利用者さんが好きな方を選べるわけではありません。

年齢、要介護・要支援認定の有無、疾患や状態、主治医からの指示などによって、どちらの保険が適用されるかが決まります。

要介護・要支援認定を受けている人の場合、訪問看護は原則として介護保険が優先されます。

ただし、厚生労働大臣が定める疾病等に該当する場合や、急性増悪などによって主治医から特別訪問看護指示書が交付された場合などは、要介護・要支援者でも医療保険による訪問看護になります。

最初からこの条件を全部覚えようとすると、

もう何言ってるか分からん。

となります。

自分はなりました。

なので、最初は大枠だけでいいと思っています。

介護保険と医療保険は同時に使うの?

ここも最初は混乱しやすいです。

利用者さんによっては、

あれ?この人、介護保険も医療保険も使ってない?

と見えることがあります。

例えば、ヘルパーやデイサービス、福祉用具などは介護保険を利用しながら、訪問看護については条件を満たして医療保険で利用している人もいます。

また、普段は介護保険で訪問看護を利用している人でも、急性増悪などで特別訪問看護指示書が交付されれば、その期間は医療保険による訪問看護へ切り替わることがあります。特別訪問看護指示書は、急性増悪などで一時的に頻回な訪問看護が必要と主治医が判断した場合に交付されます。

つまり、

介護保険と医療保険のサービスを生活全体では両方使っていても、同じ訪問看護を両方の保険で二重に使う、という話ではありません。

新人の頃なら、

今、この人の訪問看護はどっち?

くらいから確認すれば十分だと思います。

介護保険と医療保険の違いをざっくり整理

細かく見るといろいろありますが、まずはこのくらいのイメージでいいと思います。

すごくざっくばらんとしてるので、詳細は確認してくださいね!

介護保険の訪問看護医療保険の訪問看護
主な対象要支援・要介護認定を受けた人介護保険対象外の人や、一定の疾病・状態に該当する人など
優先関係要支援・要介護者は原則こちら一定の疾病・状態などではこちら
連携主治医・ケアマネジャー・介護サービスなど主治医との連携が多く、必要に応じて他職種とも連携
自分の経験上多い印象高齢者、状態観察、内服管理、生活支援など幅広い難病、精神、小児、若い世代、医療依存度の高い人など
看護師がすること必要な看護をする必要な看護をする

最後の行、一緒です。

ここが自分としては結構大事です。

介護保険でも主治医の指示に基づいて訪問看護を行いますし、医療保険だから全員が重症というわけでもありません。制度上の分類と、実際のケアの大変さは別物です。

介護でも、医療でも、私たちがやることは変わりません。

介護保険だから「軽い利用者さん」とは限らない

介護保険と聞くと、

高齢者の体調確認が中心なのかな。

と思う人もいるかもしれません。

実際は、本当にいろいろです。

例えば要支援の方でも、認知症が強く、薬がきちんと飲めていない。その結果、体調を崩しているということもあります。

そうなれば、訪問では残薬を確認して、なぜ飲めていないのか考えて、服薬方法を調整して、家族とも話して、必要ならケアマネジャーや主治医へ報告する。

普通にやることたくさんあります。

一方で、要介護度が高い人でも状態が安定していて、

今は定期的に体調を見てもらえれば大丈夫。

ということもあります。

つまり、

要介護度が高い=訪問看護が大変

でもなければ、

要支援=簡単

でもありません。

要介護度だけ見て、

この人は軽そう。

なんて考えて行ったら、全然違った。

普通にあります。

結局、その人に何が必要なのかです。

同じ30分でも中身は全然違う

訪問時間も同じです。

同じ30分でも、内服管理をする30分と、入浴介助をする30分では体力的な負担が違います。

褥瘡処置をする30分もあれば、ご本人や家族の話を聞きながら状態を整理する30分もあります。

だから自分は、

介護保険だから楽。

医療保険だから大変。

とはあまり考えていません。

保険ではなく、利用者さんを見る。

結局そこです。

医療保険では難病・精神・若い世代なども多く経験した

自分がこれまで経験してきた中では、医療保険の利用者さんは、

  • 難病
  • 精神疾患
  • 若い世代
  • 医療依存度の高い人
  • 頻回な医療処置が必要な人

などが比較的多い印象です。

精神疾患についても、精神科訪問看護指示書が交付されるなど一定の条件では、要介護者であっても医療保険による精神科訪問看護が行われます。認知症が主傷病の場合など、取り扱いが異なるケースもあるため、「精神疾患=全部医療保険」と単純に覚えるのはやめておいた方がいいです。

また、普段は安定している利用者さんでも、状態が悪くなって点滴が必要になり、一時的に複数回訪問することもあります。

そういうときは、

昨日と比べてどうかな。

点滴して状態は変わったかな。

このまま在宅で見て大丈夫かな。

そろそろ主治医へ報告した方がいいかな。

と、変化を見ながら考えます。

大変さはありますが、いろいろな疾患や状態変化を見ることができるので、看護師として経験になる部分も大きいです。

介護保険ではケアマネジャーとの連携がかなり大事

介護保険の利用者さんでは、ケアマネジャーとの連携がかなり大切です。

自分は看護師だけでなく、ケアマネジャーとして働いた経験もあります。

ケアマネ側にいたとき、訪問看護から、

最近むくみが強くなっています。

薬がかなり余っています。

入浴が難しくなってきています。

ご家族がちょっと疲れていそうです。

みたいな情報をもらえると、本当に助かりました。

ケアマネジャーは毎日利用者さんの家へ行っているわけではありません。

訪問看護から情報が入れば、必要に応じてヘルパーを調整したり、福祉用具を考えたり、主治医へ相談したり、家族と今後について話したりできます。

逆に、全然報告がないと、

最近どうなってるんだろう?

となります。

そして何か起きてから、

実は前からこんな状態で……。

と言われても、

いや、早よ言えや、実はちゃうわ。

となります。

ケアマネ側も、情報がなければ動けません。

「報告はいらない」と言われても必要なことは共有する

ケアマネジャーによっては、

細かいことは毎回報告しなくて大丈夫ですよ。

と言われることもあります。

もちろん、毎回、

今日も血圧120台でした!

ご飯食べてました!

と全部送ればいいわけではありません。

それはちょっと鬱陶しいと思います(´・ω・)

ただ、

  • 明らかな状態変化
  • サービス調整が必要そうなこと
  • 家族の困りごと
  • 生活上の大きな変化

などは共有するようにしています。

結局、何かあったときに困るのは利用者さんです。

看護師、ケアマネジャー、ヘルパー、リハビリ、医師。

みんな同じ人を見ていますが、見えている場所は違います。

だから、自分のところに入ってきた情報を、必要な人へつなぐ。

それも訪問看護師の仕事だと思っています。

医療依存度が高い人では主治医への連絡も増える

医療依存度が高い利用者さんでは、主治医へ連絡する機会も増えます。

状態変化、薬、点滴、疼痛コントロール、看取りなど、医師へ確認したいことはいろいろあります。

病院なら医師が同じ建物にいるので、

先生、ちょっといいですか。

と聞けることもあります。

訪問看護ではそうはいきません。

電話やFAX、ICTツールなど、その医療機関や地域の方法で連携します。

だからこそ、

何が起きていて、自分はどう考えていて、何を確認したいのかを短く伝える力

はかなり大事です。

長々しゃべった結果、

で、結局何を聞きたいの?

となったら、お互い困ります。

自分もまだまだですが、これは経験を重ねながら慣れていく部分だと思っています。

新人のうちは制度でつまずいて普通

訪問看護を始めると、

介護保険、医療保険、別表、特別訪問看護指示書、加算、公費……。

いろいろ出てきます。

たぶん、

なんで?

となります。

大丈夫です。

自分もなりました。

最初から全部理解している人なんて、そうそういないと思います。

仮に1日5件訪問するとしたら、週5日で25件です。

もちろん同じ利用者さんへ何度も訪問することもありますが、それでもかなり多くのケースを見ることになります。

この人は介護保険なんだ。

この人はこの疾病があるから医療保険なんだ。

この人、普段は介護保険なのに今は医療保険なんだ。なんで?

と思ったら聞く。

それを繰り返していると、

ああ、だからか。

と少しずつつながってきます。

制度を利用者さんの顔と一緒に覚えていく。

自分はこの覚え方でいいと思っています。

教科書を最初から最後まで丸暗記するより、

あの利用者さんのケースだ。

と思い出せる方が、自分は頭に残ります。

看護師が制度を全部暗記する必要はないと思う

一般の訪問スタッフであれば、最初は大枠を知っておけばいいと思っています。

分からなかったら、

この人って、なんで医療保険なんですか?

と管理者や事務スタッフへ聞けばいい。

知らないなら聞く。

そこで一つ覚える。

それでいいです。

教えてくれなかったり、馬鹿にされるようなら、そこの職場は大したことないので転職しましょう。

自分のためにも、なにより利用者さんのためになりません(; ・`д・´)

ただし、契約や料金説明を担当したり、管理者になったり、請求へ関わったりするのであれば話は変わります。

利用者さんから、

なんで今月は医療保険になってるんですか?

と聞かれる立場なのに、

いや、分かんないです。

では、さすがに困ります。

必要な知識量は、その人の立場によって変わる。

自分はそう考えています。

新人スタッフと管理者が、同じレベルで制度を把握している必要はないです。

保険が違っても、看護師が見るものは同じ

ここが自分としては一番伝えたいところです。

介護保険だろうが医療保険だろうが、利用者さん自身が変わるわけではありません。

例えば宅配便なら、送料を本人が払うのか、会社が払うのか、別の仕組みで払うのか。

お金が流れるルートが違っても、

届ける相手と荷物は同じです。

訪問看護も少し似ていると思っています。

介護保険なのか。

医療保険なのか。

それは看護を届けるための制度上のルートです。

でも玄関を開けたら、

今日から医療保険なので別人です。

なんてことは当然ありません。

いつもの利用者さんです。

今日の体調はどうか。

前回から何か変わったか。

困っていることはないか。

必要なケアは何か。

誰かへつなぐ必要があるか。

看護師が見るのはそこです。

制度は知る。でも、制度ばかり見て利用者さんを見失わない。

それでいいと思っています。

転職前に介護保険と医療保険の割合は聞いておきたい

訪問看護へ転職するとき、自分なら、

介護保険と医療保険の割合はどのくらいですか?

と聞きます。

これは、どちらの保険が良い悪いという話ではありません。

その事業所がどんな利用者さんを多く受け入れているのかを知る材料になるからです。

例えば医療保険の利用者さんが多く、難病や精神、小児、医療依存度の高い方を多く受け入れている事業所なら、状態変化のアセスメントや医療処置を経験する機会も多いかもしれません。

一方で介護保険の利用者さんが多い事業所なら、高齢者の生活支援、認知症、内服管理、ケアマネジャーや介護サービスとの連携などを多く経験する可能性があります。

ただし、これもあくまで傾向です。

介護保険でも医療処置の多い人はいますし、医療保険でも生活全体を見る必要があります。

なので割合だけでなく、

どんな疾患の利用者さんが多いですか?

どのくらいの年齢層が多いですか?

30分訪問と60分訪問はどちらが多いですか?

まで聞くと、かなり働くイメージがしやすくなります。

面接で確認しておきたいことは、こちらの記事にもまとめています。

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介護・医療の割合を見ると「どんな経験を積めるか」も見えてくる

転職なら給与や休みはもちろん大事です。

自分もそこはかなり見ます。

生活ありますからね。

ただ、

そこでどんな看護を経験できるのか

も見ておくといいと思います。

介護保険の利用者さんから生活を見る。

医療保険の利用者さんから状態変化や医療処置を学ぶ。

ケアマネジャーと連携する。

医師と連携する。

ヘルパーやリハビリと相談する。

一人の利用者さんへ関わるだけでも、

そんな制度あるんだ。

この職種って、ここまでやってくれるんだ。

と知らなかったことがどんどん出てきます。

1日5件なら5件分。

1週間で25件なら25件分。

全部が自分の経験値になります。

これは訪問看護の面白いところの一つだと思っています。

まとめ|最初は「なんでこの保険?」くらいからでいい

訪問看護の介護保険と医療保険は、最初は普通にややこしいです。

基本として、要介護・要支援者の訪問看護は介護保険が原則優先されますが、一定の疾病・状態や特別訪問看護指示書などにより医療保険となる場合があります。

でも、新人のうちから全部暗記しようとしなくてもいいと思います。

この人は介護保険なんだ。

この人は医療保険なんだ。

なんで?

まずはそれでいいです。

分からなかったら聞く。

一人ずつケースを経験する。

そうすると、

この病気だからか。

今はこの状態だからか。

だからケアマネさんとこういう連携をするのか。

と少しずつつながってきます。

そして、どちらの保険で訪問していても、看護師としてやることの本質は変わりません。

玄関を開けた先にいるのは、「介護保険の人」「医療保険の人」ではなく、目の前の利用者さんです。

制度を理解することは大切です。

でも制度を見るために訪問しているわけではありません。

その人の体調を見て、生活を見て、必要な看護をする。

自分はそれでいいと思っています。

訪問看護の仕事内容や給料、オンコール、転職先の選び方などは、こちらの記事にまとめています。

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